2019年度講習会 第1回講演会の報告

Jul 28, 2019

2019年第1回講演会(和洋女子大学家政学部長柳澤氏)ご参加頂きましてありがとうございました。柳澤氏には「子どもの食べる口腔機能の発達に見合った食材と固さ」を整えることが、子どもの食べる機能の発達にどのように関わっているかを映像、データ資料を交えて講演いただきました。

“子どもは野菜を嫌いなのではありません” 参加者の皆さん目からウロコ!

(( 前半 ))

講演の前半では新生児から離乳初期の哺乳の変化、乳以外のものも取り込めるようになった離乳初期、舌で食べた物を潰すようになる離乳中期、舌で潰せない固さのものを舌で脇に送って歯茎で潰す離乳後期、前歯で一口量を噛み切って歯茎で食べる完了期に分けて発達に沿った「食事の進め方」と「食材の調理」を解説して頂きました。「発達」についてはビデオを使って、”見て知る発達の状態”と”理解して推察する発達の機能”について、「食事と食材」については主に食材毎の固さの段階を具体的な数値で紹介頂き、月齢に頼らず子どもの”食べる機能の発達に合わせた食事”と”発達を促す食事の進め方”の理解を深めて頂ける内容でした。

(( 後半 ))

講演の後半は「乳歯の萌出と手指の発達で介助されて食べることから自立して食べることへの移行」と「手づかみ食べ(手つまみ食べ)の効果、前歯で噛み切り臼歯ですり潰すことによる歯根膜からの感覚入力と咀嚼の獲得、手づかみ食べに適した食材の生、加熱による硬さの変化等」を最新の文献やご自身の研究データーからお話して頂きました。子どもが野菜を食べないのは嫌いなのではなく、食べられない(食べにくい)という事、よく噛んで食べることで美味しく食べることが多様な食べ物を「快いもの」として脳に刷り込まれる大切さが納得できる内容でした。

アンケートの紹介

講演会のアンケートご協力ありがとうございました、ご質問には個別に回答させていただいておりますが、講演会の理解の一助として参加者の皆様と共有させて頂きたいものをご紹介させて頂きます。匿名での掲載にいたしましたのでご理解下さい。

Q1

家庭で母乳育児(生後7~8ヶ月)で哺乳瓶を受け付けない(いろいろな乳首を試したが、食事は食べるようになっている)

回答

乳首を口にするのを嫌がる場合は、赤ちゃんのきゅうてつ反射を利用します。指で口の周りを押してあげると、反射で赤ちゃんは自ら乳首に吸い付きます。
口に入れているのに吸ってくれない場合は子どもの食べる機能を理解することで見えてくることがあります。子どもの哺乳行動では舌で乳首を口蓋に押し付け舌に力を入れて吸引しながら下顎はわずかな前後運動をします、その時に頬の内側の頬筋も乳頭を挟み込むように使われるので、頬を軽くタップしてあげる事で反射により吸引が促されることが期待できます。哺乳行動は口腔内の発達にとても大事です、吸引しなくてもお乳が流れ込むような乳首を使用すると哺乳期を過ぎても口腔内の発達が未熟で不正な歯並びや顎口腔系機能障害の要因になる可能性があります、食事の助けだけでなく発達を促す哺乳に心がけましょう。

Q2

複数の保育園の栄養管理をしている中で離乳食を細かく刻むことで対応している園では噛めない、噛まない悩みを多く見受けられます。
そのような園に理解してもらえるように指導するにはどの様に説明したら良いでしょうか。

回答

子どもの食べる機能の発達において「舌で潰す」から「噛む」ことにつなげるには、離乳初期の「飲み込む」ための調理において食材をペースト状に調理することが大切です。ペースト状にすることで離乳中期食の「舌で潰す」を促します、「舌で潰す」ためには”舌で潰せる大きさ”、”舌で潰せる固さ”が大事です。食材を”細かく刻む”と崩れて舌で潰せないので飲み込んでしまい、噛むための口を動かす機能を学ぶことができないまま成長してしまいます。
食べる機能の発達が進むと離乳後期食では前歯で噛み切って一口量を摂り込み歯茎に運び潰します。この時舌では潰せない固さにすることで、より力強く潰せる歯茎で潰し噛むことの萌出となります。

Q3

加熱によって栄養量はどのように変化しますか。

回答

根菜、葉菜ともに茹でることで水溶性ビタミンは減ります。特にビタミンCの減り方は50%程度と言われています。
肉・魚の栄養成分の変化としては、タンパク質については殆ど変化しません。脂肪は調理方法によっては、融けて減ります。それ以外の
大きな変化はありません。(もともとビタミンが多く入っていないので)細かくは栄養成分表に調理後食品の表示が増えましたので参考に
して下さい。ただ注意点は生の時の100gは加熱時の100gではなく、基本加熱によって重量が減りますので、加熱後100g当たりの栄養素量は数値的には増えたように見えます。これは水分や脂肪が減って、栄養密度が高くなっただけで加熱によって栄養素が増えることはありません。

講演会を終えて

月齢に頼らず子どもの発達に沿った食事については、なかなか浸透していないというのが実感です。今回の柳澤氏の講演は発達と食事の関わりを機能と物理的な計測値を合わせて解説頂き説得力が高く参加者の助けになればと期待しております。

今後の講習会のお知らせ

子どもの食事研究所の今後の講習会は下記の様に企画しております。引き続きご参加頂けますようお誘い致します。

① 講演会

中村丁次氏による「子どもの成長・発達をたすける栄養と食事」
8月9日PM6:15~ 武蔵野公会堂第一・第二会議室

② レクチャー

CK式子どもの成長・発達をたすける保育所の食事のすすめ方・たすけ方
8月25日AM10:00~PM4:00 立川アイム
(前2回の講演を活かした食事のすすめ方・たすけ方のレクチャー・試食体験)

③ 学習会

第2回 夏の食材と調理の実践報告と秋冬の食材の献立の展開
10月26日(土)AM10:00~12:00 PM1:00~2:00
第3回 秋冬の食材と献立の実践報告
2020年度調理室・保育室 年間計画

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